今年で8回目の北海道アウトドアフォーラム。“ちゃんと楽しいアウトドア”をテーマに、国立日高青少年自然の家で11月11日(金)~13日(日)の2泊3日で開催されました。
参加者
2019年以来のリアル3日間開催に加え、1日目のみオンライン参加可能なハイブリッド形式、そして初の週末開催という新しい形式での実施になり、150名を超える方にご参加いただくことができました。
申込み段階での参加者内訳をみると、男女比が約2:1で男性が多いのは変わらずですが、昨年が約7:1だったことを鑑みると、大幅に女性の割合が増えたことがわかります。
年代は20代・30代・40代・50代がほぼ同数で、30代以下が半数以上を占めており、10代から70代まで幅広い層の参加がありました。
参加回数は初の週末開催ということもあり、初参加が65%と多く、2回目が15%、3回以上が19%でした。
職種はガイドやショップ、メーカーなどのアウトドア事業者が26%で最も多く、続いて観光事業者(13%)、自然体験活動団体職員(12%)のほか、行政職員、高校生、大学生、地域おこし協力隊員、学校教育関係者、ボランティア指導者、幼児教育関係者、野外教育研究者と、例年以上に幅広い職種の参加がありました。
地域別にみると、道央エリアからの参加が全体の3分の2を占め、うち札幌を含む石狩地方が約30%、日高地方が約20%でした。続いて道北(上川)、道東(十勝・オホーツク)、道南(渡島)と続き、道外からも7人の参加がありました。
プログラム
11/11(1日目) | 交流プログラム①/基調講演/トークセッション/交流プログラム② |
11/12(2日目) | 朝活プログラム①/選択ワークショップ①②/交流プログラム/③選択ワークショップ③④/プレゼンテーション/交流プログラム④ |
11/13(3日目) | 朝活プログラム②/選択ワークショップ⑤/全体ワークショップ |
交流プログラム
進 行:
- 松岡 和樹 さん(株式会社地域環境計画)/鈴木 宏紀(自然考房 Nature Designing)
- 松岡 和樹 さん(株式会社地域環境計画)/鈴木 悠太 さん(支笏ガイドハウスかのあ)
- 小野 浩二 さん(株式会社秀岳荘)/齋藤 弘樹 さん(一般社団法人北海道ウォーターセーフティ協会)
- 松澤 直紀 さん(支笏ガイドハウスかのあ)
3日間のプログラムのうち、交流プログラムを4回実施して参加者の交流を促しました。特に、1日目のプログラム冒頭に交流プログラムを実施したのは今回が初の試みで、緊張感があった会場の雰囲気が一気に和んだのが印象的でした。
基調講演
「アウトドア業界にダイバーシティ&インクルージョンを取り入れたら、 いただきますカンパニーが生まれた話」 | 井田 芙美子 さん(株式会社いただきますカンパニー 代表取締役) |
「北海道には本物のアウトドアがある!」 | 鈴木 みき さん(イラストレーター) |
「改めて“アウトドア”と“教育”を考える」 | 野口 和行 さん(慶応義塾大学 教授) |
今回も、3人による基調講演が行われ、はじめに井田さんは事業的側面から、いただきますカンパニー設立の経緯や畑ガイドの仕組みについて話されました。また、本フォーラムの全体テーマである“ちゃんと楽しいアウトドア”にはクオリティ、コンプライアンス、サステナビリティの3つの要素が必要であり、それはいただきますカンパニーの事業にも通じるという説明がなされ、多様性を受け入れ、活かすことで北海道のアウトドアはもっと楽しくなるという総括をされました。
続いて、鈴木さんは自らの体験と心理的側面から、カナダの大自然と北海道の共通点や、そこでは人工物がなく本当の孤独になれること、活動のジャンルは関係なく自分の魂があらわになる体験ができると話されました。また、アウトドアをちゃんと楽しむためにはそのフィールドをよく知ること、北海道の自然は素材が素晴らしく、利便性に走らず何もない自由を維持してほしいという総括をされました。
最後に野口さんは教育的側面から、過去のHOFコンテンツの要素分析やアウトドアの概念的な説明のほか、ジャパンアウトドアリーダーズアワード(JOLA)や発達障害児対象のキャンプ事例の紹介を通じて、野外教育の現代的意義について解説されました。また、アウトドアという言葉の広さと深さやアウトドアに浸る価値、よりよく豊かな社会の実現や課題解決の手段としてのソーシャルアウトドアについても提議されました。
トークセッション
<スピーカー>
- 井田 芙美子 さん(株式会社いただきますカンパニー 代表取締役)
- 鈴木 みき さん(イラストレーター)
- 野口 和行 さん(慶応義塾大学 教授)
<進行> 白川 美穂 さん(NPO法人登別自然活動支援組織モモンガくらぶ)
基調講演に続くトークセッションでは、参加者とのやり取りも交えながら、進行の白川さんが講師の皆さんと質疑応答を行う形で進められました。取り上げられた話題は、それぞれのコロナの影響やちゃんと楽しいアウトドアについて、観光と教育の違い、世界の野外教育など。そこから発展する形で学校教育での野外活動の体験談に話が及び、学びのタイミングや多様な選択肢の重要性、お金を払ってお客さんになることの大切さ、多様な人たちが集うHOFの価値、若い世代へのメッセージへと話が発展していきました。若手の育成や待遇改善など、シリアスなテーマにも踏み込みながら、北海道のアウトドアをよりよくしていくための様々な提案が出されました。
朝活プログラム
2日目朝と3日目朝に朝活プログラムを実施し、10タイトル12枠のエントリーがありました。エントリーは当日募集、参加申込みも当日という即興性が魅力のコンテンツで、タイトルもeMTB体験、ヘリスキーVR体験、LGBTQ、個人事業主のススメなど、バラエティに富んだ内容で、早朝から熱い学びの時間が展開されていました。
プレゼンテーション
2日目の夜、2会場に分けてプレゼンテーションを実施しました。プレゼンテーションの実施は、HOF2019以来3年ぶりです。12タイトルのエントリーがあり、それぞれの発表時間は10分と短いものの、専門的な内容が多く、どれも聴きごたえのある内容でした。HOF2019以来3年ぶりです。12タイトルのエントリーがあり、それぞれの発表時間は10分と短いものの、専門的な内容が多く、どれも聴きごたえのある内容でした。
選択ワークショップ
2日目の午前から3日目の午前にかけて、全31枠27タイトルの選択ワークショップを実施しました。各回6~7タイトルのうちからワークショップを選択でき、内容も体験型のものや討論中心のものなど様々で、興味や関心が近い参加者同士の交流も活発に行われていました。各ワークショップの詳細については、Hokkaido Outdoor Network(HON)のウェブサイトで公開していますのでご覧ください。
全体ワークショップ
<スピーカー>
- 億貞 拓磨 さん(Field of Dreams)
- 村上 晴花 さん(北こぶしリゾート)
- 斎藤 彦馬 さん(さらべつ昆虫研究所)
<進行> 島田 知明 さん(然別湖ネイチャーセンター)
事前に参加者にアンケートを募り、話をもっと聞きたい方3名を選出して壇上に上がってもらいました。「あなたにとってちゃんと楽しいアウトドアとは?」をテーマに、フォーラムの感想やちゃんとしていない疑似体験の重要性、大多数の一般旅行者にどうやって伝えていくか、など参加者からの質問も交えて意見交換が行われました。
展示
メイン会場のプレイホールや玄関にて、15団体が出展しました。アウトドアギアの展示や活動紹介、地域の紹介、地元高校生によるPRなど、これまでにないバリエーション豊かな出展がありました。また、会場内には自己紹介シートの掲示や人材募集掲示板、イベント情報掲示板、配布資料設置コーナー、なんでも相談窓口など、様々な交流や情報交換のしかけを配置しました。
ふりかえりと今後に向けて
今回も新型コロナウイルス感染症の影響により、1日あたりの人数を制限しての実施でしたが、それでものべ150人以上、運営スタッフや自然の家職員も含めると200人近いメンバーでのフォーラムとなり、コロナ前のHOF2019を彷彿とさせる盛り上がりでした。
また、初の週末開催で新規参加者や女性の参加者が多く、フレッシュな雰囲気を感じたのと同時に、交流プログラムの積極的な実施により、参加回数や職種、年代、地域を越えた交流が生まれていたことも強く印象に残りました。
大規模イベントや宿泊事業の解禁、インバウンドの回帰など、自然体験活動やアウトドア業界にとって明るいニュースが聞こえてくるなか、フォーラムでのつながりをきっかけに各地で新たな活動や事業が生まれ、拡がっていくことを期待しています。
北海道アウトドアフォーラム2022 実施報告
文責:自然考房 Nature Designing 鈴木宏紀