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interview#02

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約7分

北海道を熱狂させるBリーグ「レバンガ北海道」を牽引する折茂武彦氏に聞く。プロとしての厳しさ、そしてバスケットボール界の未来に向けて今取り組んでいること。

体を動かすことが好きな少年時代。北海道という場所で見えてきた地域とのつながり。

― さっそくお聞きしていきますが。折茂さん、小さい頃はどういった少年時代だったのでしょうか。

折茂 まあ、落ち着きのない子でしたね。

― 体を動かすことが好きで?

折茂 そうですね。やはり勉強よりも運動の方が好きでした。バスケットはやったことなかったんですけども、野球だとかサッカーだとか、水泳だとか、いろいろなことをやっていました。学校が終わった後も、家にいることはほぼなかったと思います。

― キャンプとか山登りもされてたんですか?

折茂 はい、もちろんです。

― 今でも、アウトドア活動はされていますか?

折茂 北海道に来てもう10年以上たっていますけど、北海道の方々って、家の前とかでバーベキューするじゃないですか。あれに衝撃を受けましたね。それがもう10年以上たつと普通になってきてしまって、夏は本当にキャンプばっかりしていますね。

― これからの時代、「地域」はひとつのキーワードだと思います。折茂さん思い描く理想の地域はどんな姿でしょうか?

折茂 かつてはバスケットがプロ化になってなかったものですから、企業スポーツの中で、地域との密着という感覚が自分にはなかったんです。ただ、北海道のプロチームに来て、初めて地域の方々と触れ合いながら、支えられているということが実感したんです。スポーツというのは、地域が盛り上がる一つです。我々レバンガ北海道も10年前は誰も知らないようなクラブだったんですけど、子ども達の育成や、地域のイベントなどに参加させていただいて、ようやく皆さんに知っていただけるようになったと思っています。

 子ども達に、バスケットやスポーツを通してどういったことを伝えていきたいですか?

折茂 プロ選手として、子ども達に夢や元気を与えないといけないですし、職業のひとつとして「バスケット選手になりたい」という子どもたちをどれだけ増やせるかというところが普及にも繋がっていくと思っています。クラブとしても、育成ということを非常に大切にしています。いかに北海道の子ども達を育てていくのかということを、学校や行政と議論しています。時間をかけながら、少しずつ時間をかけながら、根気強く、子ども達のために大人ができることを全力でやっていかなければいけないですよね。

プロスポーツの世界「失敗もよし、挫折もよし、負けることもよし。そこから逃げるのではなくて、何を学ぶのか」

― プロスポーツというのはどのような世界なのでしょか?

折茂 プロ選手って孤独です、なにしろすぐに結果が出てしまう。また、結果を求められる。まぁ、調子良ければいいですけど、(自分は)27年間やってきましたけど、調子いい時なんてそんなないんですよ。結果が毎回出せるわけでもない。そのたびにいろんなことを言われてというのが、プロ選手の宿命なんですよ。
だからたくさん「失敗」もしますし「挫折」もしますし「敗北」もする。この3つなんてあまりいい言葉じゃないですけど、プロ選手は、これと向き合う時間がはるかに多いんですよ。これを避けたら、プロ選手じゃいられなくなる。だから、子供たちに伝えたいのは、失敗もよし、挫折もよし、負けることもよし。そこから逃げるのではなくて、何を学ぶのかということです。僕は本当にこの3つから多くのことを学んだし、これがあったからこそ自分が成長できたというふうに思っています。

― 折茂さんの選手生活は成功でしたか?

折茂 僕、もともと成功が何をもって成功なのかわかってない人間で。27年間も現役をやって、日本代表にも入って成功した、というふうに周りの方々は言ってくれるんですけど、僕は何をもって成功なのかがわかっていないし、これが成功だとも思ってないんですよ。やっぱり最終的には自分がなりたい自分になれたかどうかということが一番重要だと思います。だから、どの職業でも、おそらく一緒だと思うんですけど、やっぱり覚悟と情熱を持って、しっかり前に進んでいくということが大切かな、というふうに思っていますね。

自分を成長させてくれた北海道、そして未来を担う子どもたちに向けて。

― (レバンガ北海道は)先日、北海道教育大学とも協定を結ばれていますが、教育の中でどういったビジョンを描いていますか?

折茂 スポーツの世界は規律を重んじることで成り立っていましたが、やっぱり僕の目から見るとそこが若干薄れてきている世の中なのなたと思っています。決して厳しいだけが全てではないですが、ある程度の規律を持った中でやっていかないと社会に出た時に通用しない人間になってしまうと個人的に思っているので、人間力をつけるためにも規律は大事だと思っています。それを我々大人が教えていかなければならないんですよ。勉強だけできればいい、スポーツだけできればいい、ということではなくて、規律や習慣を守りながら一人の人間として楽しい人生を送ってもらいたいと思っています。

― スポーツや教育などいろんな側面を通して、その人が幸せになっていく、ということでしょうか。

折茂 そうですね、そのためには、やはり僕自身は人間力というものを上げていかないと自分も幸せになれないですし、周りを幸せにすることもできないと思います。僕は本当にバスケットだけをやってきた人間なので、特に北海道に来てから沢山の方々に支えていただき、応援していただいて、自分で言うのもなんですけど、北海道に来る前と来てからはまったく人間力が違っています。自分を成長させてくれたのが北海道なので、自分の経験も含めて、子ども達に伝えていければなと思っています。

― そういった思いが、子ども達との交流や教育活動に繋がっているということですね。

折茂 はい。

― いま、コロナやウクライナ情勢などで、なんとなくもやもやっとした不安な世の中ですよね。

折茂 そうですね。スポーツで大きな変化をもたらせられるわけではないですけど、試合を観ていただくことによって、一時でもそういったことを忘れられるような時間を提供できればなと、そういった小さいことの積み重ねだと思っています。

地域、日常に根付く「バスケットボール」を。子どもたちの日常の遊びの場をつくりたい。

― これからの折茂さんの夢は?

折茂 達成できるかはわからないのが夢ですから、本当にどうなるかはわからないんですけど。

バスケットという競技が溢れる社会を作っていきたい。道を歩いて公園でバスケットリングが立っていて、そこでたくさんの子供たちがバスケをする姿を見たときに、自分はバスケット人として、またこのクラブを立ち上げたことに対して、成功だったなって思える瞬間なのかなって思っているんです。それが自分の夢です。

― 公園も少なくなっていますよね。

折茂 子供たちが遊べる場がなくなってきちゃってます。やっぱり今、デジタル社会になってゲームとか、決して悪いことではないと思うんですけど、やっぱり僕らの世代っていうのは外で遊ぶというのが一つの習慣でもあった。だから我々ができることは公園を増やし、またそういった公園にリングを建てて、そこで遊べるような世の中にしていきたいです。

― 今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

折茂 こちらこそありがとうございました。

折茂武彦氏

レバンガ北海道代表取締役社長

1970年埼玉県生まれ。
1993年に日本代表初選出以来、3度のアジア選手権、2度の世界選手権に出場。2007年にレラカムイ北海道へ移籍、その後、2011年にレバンガ北海道を創設。
2019年1月、国内トップリーグ通算10000得点を日本人で初めて達成。 2019年シーズンをもって現役引退。

山本草

北海道アウトドアネットワーク推進委員会
NPO法人当別エコロジカルコミュニティー

編集後記 (山本)

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