私が野外教育(自然教育)の中で教科書にしているものがあります。
アウトドア指導の関係者であればメジャーな本かと思いますが、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』です。
著者のレイチェル・カーソンは、1962年に著書『沈黙の春』で農薬や化学物質による環境汚染や破壊の実体に、いち早く警笛を鳴らしたアメリカの海洋生物学者です。この後、自然環境への関心が世界中に広がったとされています。
『センス・オブ・ワンダー』は、レイチェル・カーソンが幼い子どもと一緒に自然を探索した体験をもとに書かれたエッセイで、子どもたちと自然の中に出かけ、神秘さや不思議さに目をみはる感性を育み、分かち合うことの大切さを伝えています。
この『センス・オブ・ワンダー』とはなにか?ということですが、本の中では、『神秘さや不思議さに目を見はる感性』と表現されています。どういうものかというと、驚きと感激・澄みきった洞察力・美しいものへの直観力・熱心で繊細な好奇心など生まれつきそなわっているものです。しかし、大人になるにつれて現実志向になり、この感性が無くなってきてしまします。野外教育を行う私たちは、この【感性】を活動の中でも大切にしています。
なぜ感性が大切かというと、『知る』より『感じる』方が重要だからです。
みなさんも覚えがあると思いますが、言葉で教えてもらったことというのは忘れやすいものです。
視覚を使って教えてもらうと少し覚えます。体を使って体験したことは身に付きます。そして、勝手に体験したことは、一番身に付くものなのです。
このように、子どもたちが勝手に体験したことは私たちが行っている自然体験活動の中で一番記憶に残るのです。そのため、プログラムを企画するときには、できるだけ子どもたちが勝手に気づく仕掛けを考えます。意図的に偶然を作り出し、感じてもらうことを体験させたいと考えています。
子どもたちと一緒に活動する大人たちは、わたしたちが住んでいる世界のよろこび・感激・神秘などを子どもと一緒に再発見し、感動を分かち合える存在でありたいと思っています。
木田貴浩
北海道札幌市出身。北翔大学で野外教育を専攻し、卒業後は一般企業を経て「公益財団法人北海道YMCA」に入職。チャイルドケア事業・野外教育事業のディレクターとして平日は2歳児から小学生までの保育事業の管理と週末は定例の野外活動のスタッフとして活動中。最近はSociety5.0社会に合わせ、アウトドア×テクノロジーをテーマに新たなプログラム開発を研究中。