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はじめに
今年で5回目を迎えた北海道アウトドアフォーラム。“北海道アウトドアの「今」を知る”をテーマに、国立日高青少年自然の家で10/29-31の2泊3日で開催されました。
参加者は過去最高の210人。ガイドやショップ・メーカーなどのアウトドア事業者をはじめ、地域おこし協力隊を含む行政関係者、大学・専門学校関係者、野外・青少年教育施設職員、自然学校・NPO職員、観光事業者など所属は様々です。年代も10代から60代までと幅広く、平日の実施ということもあり、職業でアウトドアに携わっている参加者が多いのが特徴です。
運営を担うのは30名の実行委員と4名の事務局。こちらもアウトドアガイドやメーカー・ショップ関係者、自然学校・NPO職員、施設職員、役場職員と幅広い人材で構成されています。それぞれが役割を担い、運営に携わることで新しいアイデアや雰囲気が生まれ、多様できめ細かい対応が実現できました。
今年のフォーラムの特徴として、もっとも際立ったのはコンテンツの数とバリエーションの豊富さです。特別講演を皮切りに、プレゼンテーション16タイトル、選択ワークショップ28タイトル、展示20団体、朝活ワークショップ6タイトル、全体ワークショップの計72コンテンツがラインナップ。さらに、2回の情報交換会や情報掲示板、企画募集ボード、コンシェルジュデスクなど、交流や情報交換を促進するための様々な場を設けました。
プログラム
- 10/29(1日目) 特別講演 / プレゼンテーション / 情報交換会①
- 10/30(2日目) 朝活プログラム / 選択ワークショップⅠ~Ⅳ / 情報交換会②
- 10/31(3日目) 朝活プログラム / 選択ワークショップⅤ / 全体ワークショップ
特別講演
「ヒグマのこと知っていますか? 野外活動の安全のために」
野幌森林公園や札幌市南区を例に、社会を騒がすヒグマについての話題提供があったのち、クマの生態や人との軋轢について学ぶ、正しく怖がる、落ち着いて適切な行動をとれる、ことを目標に「1.クマを知る」「2.データから見る人身事故」「3.実例から学ぶ」「4.クマとの折り合いをつける」の4項目についてお話しいただきました。
- クマを知る では、全道にいるヒグマの“分布”や、生活サイクル、食べ物、嗜好性などヒグマの“暮らし”について。また、足の大きさや木登り、走る速度など“からだと身体能力”、学習、人慣れ、馴化といった“行動”について、事例も交えて紹介いただきました。
- データから見る人身事故 では、被害者数の推移や行動の内訳、人身事故のパターン(①防御的な攻撃 ②興味本位の接近→攻撃 ③積極的な攻撃)、発生原因(突然の遭遇が約半数)、人身事故を避けるには(会わない、知らせる、複数人、気を配る)、それでも会ってしまったら(食料は絶対に与えない、ゆっくり距離を取り、その場から立ち去る、いざとなったらクマスプレー)、およびクマスプレーの注意点について説明がありました。
- 実例から学ぶ では、1996年知床の番屋事件、2013・2014年せたな町の事例をもとに、ヒグマが人間の出すゴミや所持している食物を食べることが、人間とクマの双方に悪影響を及ぼすというお話がありました。
- クマとの折り合いをつける では、行動から見たヒグマの段階判断に基づく対応(北海道ヒグマ管理計画)と、森林地帯のヒグマへの対応(0~3の4段階)の紹介があったのち、2019年7月に日高山脈カムイエクウチカウシ山で発生した人身被害(同一地点、同一個体、段階3:人間を攻撃する→排除推奨→奥山のため注意看板設置)を例に、自然公園における利用者の安全確保という課題が提起されました。
実際の事例や科学的調査にもとづいた情報提供はわかりやすく、普段野外で活動する多くの参加者にとって、とても有意義で今後の活動に役立つ内容だったと思います。
プレゼンテーション
2会場に分かれ、各会場10分間×8タイトル、計16タイトルのプレゼンテーションが行われました。そのキーワードを羅列すると、「SDGs」「地域・事業者間連携」「自然体験活動のあり方」「地質災害」「保険・医療・福祉」「ヒグマ研究調査」「子どもたちの遊び」「若手ネットワーク」「減災啓発活動」「指導者資格制度」「防災サバイバルキャンプ」「観光産業による地域おこし」「親も巻き込む自主保育」「川の経済的活用」「病気とたたかう子どもたちのキャンプ」「地域ミーティング」と、幅広いテーマが取り上げられました。
選択ワークショップ
2日目の午前・午後、3日目の午前にかけて、160分×4タイトル、80分×24タイトル、計28タイトルのワークショップが開催されました。
「SUP&カナディアンカヌー」「ブッシュクラフト」「地図読み」「撮影技術」「馬搬と薪作り」「薪作りとBBQ」「地質・岩石」「昆虫」「キノコ」「アドベンチャープログラム」といったアウトドアでの体験プログラムや、「クラフト」「減災教育」「SDGsカードゲーム」「グローイングアップワイルド」といった屋内での体験、「野生動物」「野鳥」「保険」「関連法令」「アドベンチャートラベル」「低体温症」「企業経営」「インバウンドへの情報提供」といった知識を学ぶ内容、「指導者の活躍の場」「学校の自然体験」「若手とベテランのマッチング」「ガイドの働き方」「アウトドアと政治」といったテーマについて話し合う内容と、様々なジャンルや切り口でワークショップが展開されました。
アウトドア×地方議員 もし、あなたが、政治の現場にいたら?
朝活プログラム
今年度から新たに実施された、朝食前の時間を利用した当日エントリー・自由参加型のプログラムです。「ヒグマとの戦い方」「馬のお世話」「くくりわなのかけ方&獣害グッズ紹介」「虫の同定」「PUSH(プッシュ)」「樹木とキノコの観察」の6タイトルのエントリーがあり、朝早い時間にもかかわらずたくさんの方が参加していました。
展示
アウトドアメーカー、ショップによる最新ギアの展示11ブースと、活動紹介、施設紹介など9枚の展示ボードがメイン会場および屋外(中庭)に展示され、3日間を通じてたくさんの参加者と情報交換が行われました。
Phenix(フェニックス) KEN GUIDE(ケン・ガイド)
情報交換会
1日目は参加者をランダムに配席し、テーブルごとに実行委員を配置して参加者間の交流やつながりたい人同士のマッチングを促しました。また、PRタイムを設け、参加している団体や企業がPRを行いました。2日目は屋外にたき火とカフェスペースを設け、各々自由に楽しむスタイルで実施。たき火を見ながらリラックスした時間を過ごせました。
全体ワークショップ
参加者を6人ずつのグループに分け、3日間のフォーラムで感じたことや学んだことを共有しました。また、グループを入れ替えて多くの人と意見交換を行い、最後はこれからの自分自身の行動に落とし込むことでフォーラムのまとめを行いました。
今後に向けて
今年も道内外から多くのアウトドア関係者が集結し、体験や情報交換、交流を通じてたくさんの新たなつながりが生まれました。まだ課題はありますが、毎回新しい取り組みとともに「つながり・学び合いの場」として進化していっていると感じています。
これから年度末にかけて、地域ミーティングや自主企画が開催され、成果の普及や具現化を支援していくとともに、実行委員会や関係者ミーティングを開催して、より良いフォーラム運営を目指していきたいと思います。
最後になりますが、北海道アウトドアフォーラム2019に参加いただいた皆さま、コンテンツを提供していただいた皆さま、献身的に関わっていただいた実行委員の皆さまに心より御礼申し上げます。
国立日高青少年自然の家、北海道アウトドアフォーラム2019事務局